育児にはとても大きな個人差が存在します。ですから、我が家でこうと思っている事が皆に当てはまる訳では当然ありませんし、一方で、世間で良しとされている事が全ての子供に当てはまる訳でも無いだろうなあ、と。
で。
うちの場合。
私から生まれ、四六時中私と一緒に暮らし、私に養育されており、同一とは決して言わないけれども情緒的には私の大きな影響下にある筈のうちの娘に関して言えば、巷間言われるような「小さい頃から書に親しむ」ことのメリットは、かなり少ないのではないか、と。いや、逆に、むしろデメリットの方が大きいのではないか、と。
具体的に思いつくデメリットを挙げれば様々あるんですが、ばっさり要約してしまうと、「あまり早い内から本をたくさん読んでいると、“オトナの方を向いたコドモ”になってしまう恐れあり」なんじゃないかと心配している私。これはあくまで個人差ですから、勿論他のおうちの「小さい頃から書に親しんでいる」お子さんがそうなるという訳では無いと思います。特に、外遊びとのバランスが上手に取れているお子さんならば、もう何の心配もありますまい。しかし、私の血を半分受け継ぐむん子、既にして運動音痴の見事な萌芽を見せ付けまくっている今日この頃。これで読書に惑溺してしまったら、行き着く先は・・・プチ私。いや、それは避けたい、ぜひ。そう、「私自身」という物凄く確固たる根拠を元に、私は娘に「あまり本を読まない子供」になって欲しい訳です。
しかし、そんな話をするともなしにしておりましたら、先日友人にあっさり言い渡されてしまいました。「それは環境の問題でしょう。アナタの所は、諦めて今から本棚の設置場所を確保する算段しといた方がヨロシイ」とな。
ああ、確かにホントにそりゃそうだ・・・と深くうな垂れる私。そういえば私の本好きは母親から譲り受けた資質であり、うちの母親も「この子に本読ませたらロクな事にならない」と一時期必死で私から書籍を引っぺがそうとしていたものでしたっけ・・・。
一方で、私の父方の祖母・伯母は全く本を読まない人。従って、当然ながら私より3つ年上の従姉も読書には全く興味なし。どれくらい興味が無かったかといいますとですね、彼女の本棚には、中2から高3までの5年間、一冊の変動も無く次の本(?)が並んでいただけなんです。「野球狂の詩」1冊・(彼女が原にサインをねだっている写真が掲載された)月刊ジャイアンツ・漢和辞典。3冊。3冊。5年間3冊。帰省する度に(従姉は諸所の事情で祖母と同居していた)「今度こそは」と期待して従姉の本棚を見てはがっくりうなだれ、仕方なく祖母からお小遣いを貰って本屋に走る、というのが私の夏の恒例行事だったのでございます。またほら、従姉が本を読まない、というのが祖母の悩みだったので、私が本代をせびるともう青天井で(笑)。で、うちの母親は伯母にしょっちゅう「どうやってコドモを本好きに仕立て上げたのか」と尋ねられたそうですが・・・母の方は、「そうしたくなかったのになってしまった」訳ですから答えに窮するより他無い、と。ああ、結局のところ読書習慣ってのは環境に因する所大なのね・・・と、過去を振り返って納得する私なのでありました。
で、そんな「書に親しまない」従姉ですが。その地ではほどほどの中高一貫教育の女子高を経てそれなりの短大を卒業し、しばらく代議士事務所で働いた後学生時代からの交際だったキャリア組公務員と結婚。男女1児ずつをもうけて官舎巡りで蓄財し、現在いわゆる「人生の勝ち組」街道まっしぐらでございます。一方私は、と顧みて見れば、本読む読まないなんざ人生には何の関係も無いと断言しても良さそうな現在の様相なのでありまして・・・とほほ。ああ、やっぱりせめて娘には、物語世界を覗く事で却って余計なものを背負わせるような事はさせたくないなあ、と思いつつ、気がつくとついついベビーカー転がして本屋うろうろしている今日この頃、全く首尾一貫しない育児姿勢の私でございます。
そんなむん子のお気に入りは、どうやら山脇百合子さんの絵。それも、みんな揃って美味しく何かを食べている図、というのが大変好みなようで、『ぐりとぐらとすみれちゃん』なる絵本の「できあがったごちそう」のページは、1日何回読まされる事か。おかげでハハはすっかり暗記してしまいましたさ。何もこんな点にまで食い意地を発揮しなくても・・・涙。