女系家族

山崎豊子強し。とにかく、話の骨格と輪郭ががっちりしているので、演出脚本がナニをやった所で芯の部分はこゆるぎもしておりません。
しかも、キャスティングがこれまたなかなかに絶妙。そのまま話を現代に持ってくるには流石に辛い舞台設定であるにも関わらず、難無くするりと視聴者を納得させるだけの時代がかった顔ぶれを揃えて、実に不思議なドラマ空間を作り出しております。「老舗の大手呉服問屋で巻き起こる骨肉の遺産相続問題」っつったら、今の東京では非常に嘘臭すぎて却って安手に見えてしまいそうなものですが。これが、高島礼子!瀬戸朝香!と来たら、世界はまんま『大奥』。ああ、呉服ねえ、遺産争いねえ、姉妹の確執ねえ、成る程ねえ・・・と、佇まいだけですっかり納得させられてしまうってものじゃぁありませんか。その上、出てくる男優もこれまた、高橋克典に沢村 一樹と、なんともクラシックな顔立ちの男性ばかり。そして、皆さんまた思いっきり時代がかった大芝居の連続で、先日放映された『赤い疑惑』なんかよりよーっぽど“あの時代の空気”を現出しております。いやあ、貴島CPお見事。
初回は2時間スペシャル、高島−瀬戸という『大奥』ラインの大バトルを中心に、まずは矢島家の女の怖さを存分に味わってから本編へ突入しましょ、という作りでございました。初回にここまで力が入っていると、次回以降のトーンダウンがちょっと心配になってしまう程。橋爪功おぢさまの「喰えないオヤヂ」っぷりもたっぷり堪能できて、とりあえずはなかなか楽しい2時間でございました。“財産には執着の無い呑気な末娘だが、父親の愛人には激しい敵意を向ける”という役どころの香椎由宇ちゃん、なかなかに頑張っております。最初に『ウォーターボーイズ』で見た時には、「綺麗だけど表情や口調にえらく潤いの無い子だなあ・・・」と思ったんですが、女優さんとして随分前進なさったご様子で。姉二人(特に高島礼子)が、正に「水を得た魚!」ってな風情ですっさまじい事になっている中、浮かず取り残されず健闘中と申し上げてよいでしょう。それから、大河ドラマ新選組!』で、「一体このぽっと出は誰?」と世間を仰天させた田丸麻紀ちゃんが、これまた怪しげな役処で出ているのにも要注目。タダでさえ長丁場な連ドラの上に初回で2時間も取っちゃってますから、田丸嬢が動き出さないと中盤だれにダレまくる事は必至でございます。その辺を、彼女が支えきれるかどうかも含めて気になるキャラクターですな。
さて、主演米倉嬢。初回はひたすらに泣いたりおどおどしたりしてばかりでしたので、まあこんな処でしょうかね、と。どうも、瀬戸朝香に苛められる米倉というのがなんとも想像つきづらいんですが(あの2人だと、「即肉弾戦!」って感じが・・・双方の肩幅ガタイの見事さを見るにつけ、実に素晴らしい一戦になりそうな気がしてならない訳ですが)。とりあえず、黒革元子と違う風情はきちんと出していたような気が致します。というか、結構ご立派な輪郭してる割に、ヘタに姑息にごまかさないでばりばりひっつめ髪しちゃう所が好感度大だわ、米倉。いいじゃないちょっと位顔の端っこの面積が余ってても、中身が綺麗なら。ねえ、長○○○○ちゃん。