*注:本日の記述には、(少なくとも私にとっては)大変下品な表現が頻出いたします事を、先んじてお詫び申し上げます。いや、あまりに驚いたので、ちょっと過激な書き方をせぬ事には収まらぬ、というかナニというか・・・ブツブツ。
愛の流刑地』通称あいるけ。日経新聞連載の小説でございます。ま、ここでいちいち説明せんでも、はてなのキーワードリンクがかかるでしょう。
我が家は、オットの仕事の都合で日経新聞を購読してるんですが、毎朝オットが通勤途中で読むために朝刊持って行ってしまうんですね。なので、この話題の連載小説と私との関係は、時折(週末、休日など)にちょろっと数行の字面を眺めては「あー、香ばしい事になってそうだなあ」と苦笑している程度、のオツキアイだった訳です。
しかし、何だか「ついに映画化決定か!」「第二の黒木瞳鈴木京香石田ゆり子か?」などという話題が出始めた昨今、折角日経取ってるのにロクに知りませーん、というのも勿体無い気がいたしまして。で、今日の朝刊掲載分を読む事にしてみたんです。いやー・・・凄いな、これ。
展開としては、まあ以下の通りなんじゃなかろうか、と(果てしなく激しい悪意にまみれたダイジェストですので、信じないように)。
「或る処に己の社会的無能さの鬱屈をフロイト的リビドーに持って行くしかないおじさんがおりました。このおじさんは、たまたま大変都合良く美しい人妻に出会い、たまたま大変都合良く肉体関係を持つ事になり、たまたま大変都合よく愛欲の日々に溺れる事となりました。が、このおじさんは脳みその中身がそっちの事ばかりなので(何せ社会的に無能故に他にする事が無い)、己の快楽を追及する余りに、何もかも自分の欲望に合わせてくれる大変都合の良い肉体を持った女性を、性交中にくびり殺してしまいましたとさ。」
で、現在は、逮捕されて勾留されてる最中らしいんですが。
いきなり驚かされたのが、弁護士に関する記述。「刑事に比べて多少は男女の事が理解できそうな人物で、安堵した」というような事が書いてあるんですよ。おーい!「気持ち良過ぎて締めすぎちゃいました」の挙句に人殺しした事を、あたかも崇高な話であるかのように「男女の事」と言い換えた挙句に、図々しくも他人に「理解」してもらおうってか!このおっさん大丈夫か!
おまけに、その弁護士に外界ではどういう報道がなされているかを問うたこの主人公、「有名人ですから大きく報道されてます」と言われて(主人公は、かつて一度だけ何かの賞を取ったがその後泣かず飛ばずの小説家という設定らしい)、
「こういう時だけ有名人呼ばわりするなんて」
と、マスコミの身勝手さに憤ってるんですよ!うわー!何度も下品下劣な表現をしてしまって誠に恐縮ですが、「気持ち良過ぎて締めすぎちゃいました」が、あたかも完璧な常識人であるかの様な冷静さでマスコミの身勝手さに憤ってる
これはもう、まともな神経の人間が真顔で書いたり読んだりするものでは無いのでは、いや、確かに単なるフィクションなんですから、いちいち目くじら立ててどうこうという対象では無いのでしょう(むしろもしかするとこの小説は、いわゆる「ツッコミ型」のオモシロノベルなのかも知れません。いや、そうであって欲しい)。
しかし、冬香さんという女性のあまりにも「都合の良い」造形といい、この「人一人殺しといて無反省に自分の『愛』に溺れている」主人公の造形といい、どう考えてもちょっと真っ当じゃない感じが致します。
たった1日分の掲載でこれですから、通読なさってる方の震撼ぶりはいかばかりかと。うーむ、この小説って・・・一種のサイコホラーってヤツなのかしら?『失楽園』のセルフパロにしても、あまりにも凄すぎるわなあ。渡辺先生、本気なんだろうか?お願い、ジョークだと言って。もしこれが「ダメ中年の夢」オチだったら渡辺先生は個人的に神様認定ですが。
いや、ナニが怖いってね、この小説を毎朝楽しみにしているサラリーマンのおじさん群像を想像しただけで、もう背筋がぞくぞくぞくぞくっと・・・(一瞬、松田洋子描く所の『薫』のルックスが頭をよぎりました・・・判る人だけ判って。ああもう今夜は怖くて眠れない)。