別に『不機嫌なジーン』の中に限った事では無いのですが。最近の竹内結子嬢のたたずまいには、“恋愛ドラマ新女王としての自身と矜持”にとどまらぬ、何とも独特の貫禄が付き過ぎちゃってるような感が。平たく言うと、「近頃ふてぶてしさが滲み過ぎてない?」と。まあ!女王に対してなんて不遜な!どきどき。
いや、元々結子嬢といえば、佳作『Friends』等で演じた“顔は可愛いがちょっと不貞腐れた女の子”が一番の売りキャラ。世を拗ねて醒めて大人への態度もふてぶてしく、それでいてどこか純な多感少女・・・という辺りを繊細に表現して見せるところから、トップへのキャリアをスタートさせた女優さんでございます。ですから、今の様に笑顔満開ああ可愛い恋愛ドラマ王道ど真ん中のヒロインよ!というポジションに収まっても、どうしても過去の杵柄がにょきっと顔を出してしまうのは仕方ないかも知れません。
が、やっぱり、例えば『不機嫌なジーン』初回のパーティシーン、お得意の“肩をすぼめてあごを引き上目遣いで「あたしって世慣れてないウブなオンナノコなんですぅ」”という表現のその肩先に、どうしても
「こうすればこう見える筈」
という定型的な、あまりにメソッドめいた力みが見えてしまう訳で。何だか最近の彼女のヒロインキャラは、どうも「きっちり仕上げる職人の技」的な部分がそこここに見えてしまって、感服はするものの「いやー、今回も落ち着いたいい仕事してますなあタケウチさん」という印象が先に立ってしまいます。そして、そのせいで、見てる方はどうしても“キュートなラブストーリー”にのめり込めないんですよねえ。「ついその気になって感情移入」が出来るか出来ないか、というのは、恋愛ドラマ---殊にゲツクにおいてはもっとも重要なファクターですからね、ここに手落ちがあるというのは非常に厳しいと思われますな。どうも竹内結子嬢、実年齢(24歳)や可憐なルックスとは裏腹に、内面はかなり腹の据わった女性であるような風情を漂わせる昨今でございます。
さて一方、松嶋菜々子嬢。こちらは逆に、いつまでも少女少女した風情が抜けぬままで、ドラマ界に復帰なさって参りました。御歳31才。気を抜いた瞬間にふと目元口元に漂う険も、「世界は私のモノ」な全能感で一杯の少女がひけらかす麗しい驕慢の香り芬々でございます。どこか中原淳一的、とまで言ったら言いすぎでしょうかしら。
何せ、子をなしてお戻り遊ばされた第一作目で演じる役どころが、「結婚と仕事との狭間で揺れる有能なキャリアガール」。つまり、実生活では母という属性までもを得てなお、“選択肢の間で悩む=まだ選択していない→まだ未来を方向付けられていない”女性を演じている、という訳ですね。で、これがお似合いじゃないかというと、いやいやそんな事は全くございませんで。「結婚するならなんでこんなの(仕事関係のセミナー)に参加してんのよ」という同僚の突っ込みに、“実はまだ自分の人生決めかねて悩んでる”事を表現するべく下唇突き出してぶーぶー不貞腐れるという、その姿から溢れ出した「見てくれの説得力」は、これがもうなかなかのものでございました。ええ、「人生全般に腹を括った30女」の力強いふてぶてしさは、そこには全く見えませんでしたとも。
という訳で、「自分の手管は自分が一番良く知っている、肝の据わった24歳」と「31歳、恋も人生もまだまだ先行き定まってなんか無いもんね」の二人のヒロイン、視聴者の共感を得るのはどっちなんでしょうかしら。うーん、黒木瞳姐(「とにかく実年齢に比べてひたすらに若く美しく己を保ち続け、恋も人生もまだまだ選択肢たっぷり」)の相変わらずの高値安定ぶりから行くと、なんだかんだ言ってもまだまだ菜々子なでしこの基盤は揺るがない、ってとこなんでしょうかね?個人的には、これからは、若い内からどっしり貫禄の竹内結子→いずれは自信満々たっぷり腰の黒田福美、って方が生き方としてステキなんじゃないかと思うんですけど。ま、難しいんだろうなあ今の日本じゃ・・・と思っていたら、仰天CMに遭遇しちゃいましたよ!おい!
世にも美しい中谷美紀が薄青のドレスをたなびかせて伸びやかに階段を駆け上りつつ、よりによって言うに事欠いて!
「28歳、少女でもない、大人でもない幸せ」基礎化粧品 SUISAI
大人じゃありませんか!28歳ってのは!今の日本では28歳は「立派な大人」ではないのですか!ああ、仰天した。しかも、それを口にするのがルックスは妖精的なれど立派な「腹据わり女優」の系譜に入る筈の中谷美紀なんだもんなあ!それも、いとも幸せそうに!よ、世も末だ・・・がっくり。ああ、そうか、こういう時にこそこれを使えばいいのだな。よし、行くぞ。

orz