ちょっと戻って金曜日の話。たまたま丁度いいタイミングで現れた母が、
「アンタ何してんの!」
と眉吊り上げて大絶叫したんですが、私、最近時折こうして不用な食器類を玄関先に出しておくんです。勿論、「ご自由にお持ち下さい」と言う紙を貼り付けて。
「誰も持っていかないわよこんなモノ!」
ゴミになるだけでしょ、ご近所に迷惑になるじゃない、と母はそりゃもう大騒ぎしたんですが。えーと、今回は2時間足らずで全部ハケました。ちなみに、右奥の白いお鍋と右手前のカレー皿セットは、ものの15分としないうちに消えてたかな。コツは、「お持ち帰り用」の紙袋も添えて出しておく事でしょうか。
うちの近所は、留学生会館などもあったりするほど学生が多く住む街。何だかんだ言って最近の学生さん、なかなかにしっかりしているようでして。
「わ、これ使える、うちプラスチックの食器しかないんだー」
なんて言いながらモノを手に取った、いかにもチャラチャラした格好の女子大生が、誰も見えぬ玄関先に向かって小さな声で「アリガトゴザイマスー、モラッテイキマース」などと呟きつつ紙袋にがちゃがちゃと食器を入れて持って行ってくれるのを覗き見するのは、私の密かな愉しみだったりするんですね。あ、ちなみに、勿論全部なくなるまで見張ってる程ヒマじゃありませんよ、私も。それに、時折周囲を巡回している古道具屋が「こりゃあシメタ」とばかりにモノを全部持っていってしまう事もあるんですが・・・まあ何にしても、まだ使える筈の物をただ捨てるよりは、まだ多少心の痛みも小さい、と。
勿論、本当はこんな事しなくてもいいように、吟味して買ってきちんと整頓しておくに越した事はないんですが。でも、やっぱり自分の中の好みの変遷や、限られた収納スペースとの兼ね合いなどで、どうしても処分しなければならないものは出てきてしまう訳で。オークションやフリマなどに出る手間をかけるまでも無い品々なら、せめてこうして誰かに拾ってもらえれば良いかなあ、と。
ただ、母がヒステリックに叫んだ「このご時世にこんな事して、大変な事を招いたらどうするの!もし、ここで拾った食器の破片で誰かが何処かで何かしたら、アンタどうするつもりなの?」というセリフは、流石に胸に刺さりましたね・・・。うちの前は幸い(それこそ昼間は学生だらけで)非常に人通りが多いので、人目の多さもあるし、余程の事が無い限りそう大変な事にはならないんじゃないか、とは思うんですが。それでもやっぱり、今後は少し控えた方がいいのかも知れません。・・・何だか寂しい気もしないじゃありませんが。だってねぇ、いかにも大学生風のカップルが嬉しそうに物色してたりするんですよ、うちのお古達を。そういう光景を、恐怖心と警戒心でもって断ち切ってしまうのは、やっぱり少しだけ、寂しい。